職場を辞めたあの日、
「きっと泣くんだろうな」と思っていた。
でも実際は、何も感じなかった。
寂しさも、悔しさも、解放感すらもなかった。
ただ淡々と、荷物をまとめて会社を出た。
それはきっと、もうとっくに心が壊れていたからだと思う。
毎日怒鳴られて、毎日耐えて、
気づかれないように息を潜めて働いて。
「辞める」という決断すら、誰にも言えないまま
ひとりで準備を進めていた。
最後の日も、周りはいつもと変わらず、
「お疲れさま〜」なんて軽い空気だった。
でも私は、その輪の中に入れなかった。
挨拶も笑顔も、全部「演技」だった。
本音は、「もう何も残ってない」だった。
会社を出たあと、電車に揺られながら、
やっとほんの少しだけ、涙がにじんだ。
それは悲しみじゃなく、
「もう限界だったんだな」という実感だった。
この新シリーズは、あの日から始まった。
感情が凍りついたまま、それでも前に進もうとした私の話。
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