朝起きて、今日は外に出てみようと思った。
何か特別な理由があったわけじゃない。
「よし、頑張ろう!」なんて意気込んだわけでもなかった。
ただ、部屋の中にずっといるのが、もう苦しくて。
外の空気を少しだけ吸ってみたくなった。
外に出るだけで精一杯だった朝
私は、誰にも会いたくなかった。
知り合いにばったり会って、気を遣うのが怖かった。
でも、部屋に閉じこもっていると、過去の出来事や誰かの言葉が繰り返し頭の中で流れてきて、もっと苦しかった。
ほんの5分の散歩のつもりで、玄関のドアを開けた。
何も期待していなかった。ただの逃避だった。

ふと立ち寄ったコンビニとコーヒー
歩いて数分のところにある、見慣れたコンビニの前を通った。
「眠気覚ましにホットコーヒーでも飲もうかな」
そう思って店内に入る。
今までは会社に遅刻しないようにと、急いで買ってすぐ職場に向かっていた。
でも今日は、誰に急かされるわけでもなく、レジも空いていて、機械の前でゆっくりとコーヒーを注いだ。
その香りが、すっと心に入ってきた。
店内の静けさと、漂うコーヒーの香ばしさが、いつもの緊張を少しだけほどいてくれた。
ベンチに座って、コーヒーを味わう
コンビニの前のベンチに腰を下ろした。
紙コップの温もりが、じんわりと手に伝わってくる。
ひと口飲むと、鼻に抜ける香りと、ちょっと苦い味が広がった。
それは特別な味ではない。どこにでもある味。
でも、その普通が、今の私には沁みた。
「あ、今日、生きててよかったかも」
そう思えたのは、何日ぶりだっただろう。

小さな一歩。でも、私にとっては大きな変化だった
誰にも気づかれない、小さな一歩。
それは、ただコンビニのコーヒーを飲んだだけの朝。
でも私にとっては、「ああ、生きてるんだな」って思えた、初めての回復の瞬間だった。
布団の中では得られなかった呼吸。
何かを味わうという感覚。
そして、心に染み込んでくる静かなぬくもり。
「また飲みに来よう」
そう思えたことで、少しだけ、自分の存在を肯定できた気がした。
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