【私の趣味のストーリー裏話 14話】 弟子入り志願、そして最初の試練

私の趣味のストーリー 裏話

プロの世界に飛び込むと決めた日

「このままじゃ終われない」

そんな強い気持ちに突き動かされて、私はついに決断した。

「プロの寿司職人のもとで、修行しよう。」

趣味として続けてきた寿司と器の世界。

でも、ある日「プロポーズで私の寿司を使ってくれた」人の声を聞いてから、心に火がついた。

「誰かの人生の一場面を彩れる寿司を、本気で作ってみたい」

そう思った時点で、趣味は志に変わっていた。

断られ続けた日々

覚悟を決めた私は、都内の老舗寿司屋を片っ端から訪ねて回った。

「弟子にしてください」と、何度も頭を下げた。

でも、どのお店でも返ってくるのは厳しい言葉だった。

「趣味?甘い世界じゃないよ」

「覚悟がなきゃ、続かないよ、この業界は」

中には、目も合わせてくれない職人もいた。

それでも「本気だ」と思っていたから、諦められなかった。

だけど、心のどこかで限界が近づいているのも感じていた。

路地裏で見つけた希望

ある日、疲れ果てて歩いていた商店街の裏道。

ふと、目に留まった一軒の小さな寿司屋。

「すし○○」とだけ書かれた、年季の入った暖簾。

今までの老舗とは違って、どこか懐かしい空気をまとっていた。

店内を覗くと、無口そうな大将がひとり。

最後のつもりで扉を開けて、これまでのことと想いを語った。

しばらく黙っていた大将は、ふと私の手をじっと見つめてから、こう言った。

「明日から来い。ただし、寿司は握らせねえぞ。」

私は心の中で叫んだ。

「…やっと見つかった」

最初に与えられた仕事

翌朝。真新しい白衣に袖を通して、胸を高鳴らせて店に入った。

だけど、現実は甘くなかった。

私に与えられた最初の仕事は…

  • 米研ぎ
  • 雑巾がけ
  • 床磨き

握るどころか、包丁すら触らせてもらえない。

毎日くたくたになるほど働いても、大将は何も言わない。

でも、それでも辞めたいとは思わなかった。

「これが、プロの世界なんだ」

その一日が、今でも自分の転機だったと思っている。

プロと趣味の決定的な違い

趣味で握っていた寿司は、あくまで楽しさが中心だった。

でも、プロの現場では、楽しさの前に責任と信頼があった。

  • 時間を守る
  • 完璧な清潔感
  • 目配り・気配り
  • 仕事への妥協ゼロ

そんな空気の中で過ごすうちに、私はだんだんと

好きだけでは乗り越えられない領域を体感していった。

「この店で、寿司を握れるようになった時、きっと私は変わっている」

そう信じて、目の前の地味な仕事に向き合い続けた。

✍️あとがき

華やかさも、優しさもない初日だった。

だけど、私はこの場所を選んでよかったと思っている。

この地味な1歩が、すべての始まりだったから。

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