魚を捌けるようになった私は、次なる欲望に取り憑かれた。
それは――「握ってみたい」だった。
にぎり寿司。
スーパーの鮮魚コーナーを眺めるだけではもう足りず、私はお米や酢のコーナーにまで足を踏み入れ、気づけば寿司モード全開。
きっと、店員さんからは「本格的すぎて怖い」と思われてたに違いない。
第一の壁:シャリ地獄
握り寿司の命とも言えるシャリ。
しかし、これが地獄の入り口だった。
研ぎ方、水加減、炊飯モード、蒸らし時間…
すべてYouTube先生の受け売りなのに、なぜか出来上がるのは「甘すぎる酢飯」や「硬すぎる米」。
しかも家族の正直な感想がダメージ直撃。
「ん?今日のは…酸っぱいね」
「前の方が美味しかった」
「これは…泥団子かな?」
ダメ出しの嵐に心がポッキリ折れかけた。

握りの練習、まるで粘土細工
動画で見る職人の手元は、まさに芸術。
でも、いざ自分が握ると――
・シャリが指にくっつく
・形が崩れる
・握りすぎてベチャッと潰れる
もう、これは「寿司」じゃなくて「握りこぶしの怪物」。
自分でも思わず叫んだ。
「うわっ、これ…寿司じゃない…!泥団子じゃん!」

それでも火は消えなかった
それでも不思議と、諦めようとは思わなかった。
失敗しても、毎晩YouTubeで職人の握りを研究。
スロー再生、一時停止、巻き戻し。
通勤電車の中でも再生リストは寿司一色。
なぜここまで続けられるのか?
その答えはシンプルだった。
「楽しいから」
「悔しいけど、もっと上手くなりたいから」
いつしか私は、シャリの一粒一粒と向き合うようになっていた。
これは単なる料理じゃない。
自己流でも、本気の「修行」だった。
結びにかえて
失敗だらけのシャリ作り。
でもその一つひとつが、私の中でちゃんとネタになっている。
笑える。悔しい。
それでも、今日も私はYouTubeを再生して、また握ってみる。
だって、これは――
「寿司道」なのだから。
💡 他の「趣味シリーズ」も読む
本編の寿司ドタバタ記録はnoteで公開中!
コメント