退職して、ようやく自由になったはずだった。
もう理不尽な怒鳴り声も、締め切りに追われるメールも、周囲のため息もない。
「やっと、解放された」
そう思っていた。そう、思おうとしていた。
けれど、心だけが取り残されたように、なぜか身動きが取れなかった。
心がまだ、会社にいる感覚
昼間はテレビを見たり、洗濯物を干したりして普通に過ごしていた。
でも夜になると、頭の中に会社の記憶が蘇る。
「どこに行っても通用しないよ」
「結局、お前は根性なしなんだよ」
何度も言われたあの言葉が、耳元で囁かれるように蘇ってきた。

深夜2時、涙が止まらなくなった
その夜、私は布団の中で目を閉じたまま天井を見ていた。
時計を見ると、午前2時を回っていた。
急に胸がぎゅっと締め付けられる。
気づけば、涙が頬を伝っていた。止まらない。
声を殺して泣きながら、体を小さく丸める。
「辞めたのに、どうして…」
「もう自由なはずなのに…」
逃げたかった会社からは離れたはずなのに、心はまだ呪縛の中にいた。
あの場所にいた私が、まだそのまま苦しんでいた。
見つけた、小さな光
目に入ったのは、机の上に置いたままのメモ帳。
そこには、退職を決意した夜に自分が書いた言葉が残っていた。
「逃げじゃない。生きるために必要なこと。」
その一文を目で追った瞬間、じわっと目が潤み、再び涙がこぼれた。
でも、不思議と呼吸が少し楽になった。
声に出して読んでみた。
「逃げじゃない、生きるためなんだ」

また笑える日が来ると信じて
「……また、笑える日が来るのかな」
自信なんてない。
でも、そうつぶやいたあと、ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。
深夜2時、涙でぐしゃぐしゃになった私。
でもその夜が、少しだけ前に進むきっかけになったのかもしれない。
💡 他の「ストレスシリーズ」も読む
コメント