【コーヒー飲んでたら投資家になってた件 25話 深掘り】

コーヒーを飲んでたら投資家になった件シリーズ

投資を始めてしばらくの間、私はずっと「ひとり」だった。
いや、ひとりでいたかったわけじゃない。
ただ、投資の話を誰かにするのが、妙に怖かった

今なら笑える。
「株買ってみたんだよね」って言うだけなのに。
でも当時の私は、そのひと言が喉の手前で止まってしまって、コーヒーで流し込むしかなかった。


投資の話をすると、空気が変わりそうだった

職場の休憩室。友達との飲み会。親戚の集まり。
そこにはいつも、無難で安全な話題が並ぶ。
「最近寒いね」「年末忙しい?」「あの店行った?」みたいな、ちょうどいい会話。

その空気の中に、投資の話を混ぜるとどうなるか。
当時の私は、それを想像するだけでビビっていた。

「え、株やってるの?すごいね」って言われたら、なんて返す?
「危なくない?」って言われたら、どう受け止める?
「おすすめある?」って聞かれたら、責任取れる?

結局、私は選んだ。
何も言わない方がラク
投資の話は、自分の中にしまっておく方が安全。
その代わり、コメダでコーヒーを飲む時間だけが、唯一の解放区になった。

詳しい人扱いされるのが怖かった

投資って、ちょっと変な世界だ。
「やってる」と言った瞬間に、勝手にレッテルが貼られる。

「詳しいんでしょ?」
「儲かってるの?」
「来年どうなる?」

いやいや、そんなの知らん。
こっちは必死に、わからないなりにやってるだけだ。
でも、知らないって言うと今度は、投資してる意味が分からなくなる。

だから黙った。
黙って、観察した。
街を見て、人の流れを見て、店の空気を見て、
自分の中で仮説を立てて、勝手に答え合わせする。

それはまるで、誰にも見られない自由研究だった。

失敗の可能性が、言葉を飲み込ませる

投資の怖さって、価格が下がることじゃない。
(もちろん下がるのも普通に怖いけど)

本当に怖いのは、言ったあとに外れた時の恥ずかしさだった。
「この企業いいと思うんだよね」って言って、次の日に爆下げしたらどうする?
「ほら、やっぱ株なんて」って言われたら、立ち直れる?

そんな未来を勝手に想像して、私はまた黙る。
黙っている限り、私は傷つかない。
黙っている限り、私は間違っていないことになる。

でも、黙っていると、投資はどこまでも孤独だ。
だから私は、コーヒーの前だけは正直になった。
「怖いな」も「面白いな」も、全部カップに落とした。

だから私は、街とコーヒーに話しかけた

投資の話を人にしない代わりに、私は街に質問するようになった。

「なんでこの店、夕方から急に混むんだろう」
「この看板、最近増えてない?」
「この商品、手に取ってる人が前より多い気がする」

街は答えてくれない。
でも、ヒントはくれる。
そしてそのヒントは、ニュースより早いことがある。

家でスマホを開いて、企業名を調べる。
事業内容を読む。沿革を読む。決算を覗く。
その順番が、いつの間にか自然になっていた。

気づけば、私は投資をしていたというより、見方を鍛えていたんだと思う。

語れない時間が、視点を育ててくれた

「投資の話をしない」って、損しているようで、実は得していた。
誰かに話すための正解を探さなくていい。
誰かを納得させるための根拠を盛らなくていい。

その代わり、私は自分にだけ正直になった。
「応援したい」
「これ、好きだな」
「ここ、強い気がする」

投資の入り口に、感情があってもいい。
むしろ感情があるから、生活と地続きになる。
生活と地続きになるから、続く。

あの頃の私は、投資家を名乗れなかった。
でも、投資家っぽい振る舞いをしていた。
街を見て、考えて、調べて、仮説を立てていた。

誰にも見えない場所で、静かに育っていくものがある。
その一つが、投資の視点だった。

名乗れなかったけど、もう始まっていた

投資家になる瞬間って、たぶん派手じゃない。
資格もないし、卒業証書もないし、誰も認定してくれない。

ただ、ある日ふと気づく。
「街が面白い」
「会社が気になる」
「人の流れに意味を探してる」

それってもう、始まってるんだと思う。
投資の前に、世界の見え方が変わっている。

私はまだ言えない。
でも、コーヒーだけは知っている。
あの頃から、私は少しずつ変わっていたことを。

この「言えなかった頃」があったから、次が生まれる。
いつか、ふとした瞬間に口からこぼれるんだと思う。

「実はさ、投資やっててさ」
その一言が、思っていたより世界を広げる日が来る。

次回、第26話。
「はじめて投資の話をしてみた日」
たった一言が、静かに景色を変えていく。


もしあなたにも「言えなかった頃」があるなら、たぶん大丈夫。
語れない時間は、ちゃんと力になる。
コーヒーが冷める前に、今日の街をもう一回だけ見てみよう。

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