「投資してるんだ」って言った後に来る、次の壁

第26話で、はじめて「少しだけ投資してます」と口にした。あの一言は、自分の中では大きな節目だったのに、周りの反応は拍子抜けするほど普通だった。世界は何も変わらない。でも、自分の景色だけが少し変わった
そんな回だった。
そして次にやってくるのが、第27話の壁。
「それ、どうやって選んでるの?」
この質問は、投資を始めたばかりの人にとって、優しい顔をした難問だと思う。なぜなら、勝ち方や正解を語れるほどの実績も、自信も、まだ手元にないからだ。
質問はシンプルなのに、言葉が出てこない
昼休みの雑談。コーヒー片手に、最近の物価の話や電気代の愚痴。そこから自然に出た「株ってどうなんだろうね」という話題。前回は勢いで「少しだけやってます」と言えた。でも今回は、その先を求められた。
「どうやって銘柄を選ぶの?」
頭の中に浮かんだのは、チャート、決算、ニュース、SNS。だけど、どれも自分の答えとしてはしっくり来ない。自分はそれだけで選んでいない。かといって、うまく説明できる言葉もない。
投資の話って、いつの間にか「勝てる方法」や「正しいやり方」を語るゲームみたいになってしまう。でも、初心者の自分には、その語り口がどうしても似合わなかった。

勝ち方は語れない。でも、見ているものは語れる
だから一度、正直に出した。
「ちゃんとした方法って言えないんですよね」
ここで終わると、なんだか自分が小さくなる気がして、もう一歩だけ続けた。代わりに出てきたのは、数字じゃなくて街の話だった。
「街を歩いてて、いつも混んでる店とか、前より人が増えた場所とか……そういうのを見るのが好きで」
専門用語は一つもない。PERもEPSも出てこない。でも、不思議と嘘じゃなかった。自分にとって投資は、勝つための技術というより、世界を見るための視点に近い。
難しそうが、ちょっと分かるかもに変わった瞬間
相手が意外そうに言った。
「それ、いいね」
この一言が、胸の奥をあたためた。投資の話をするとき、どこかで「間違えたら恥ずかしい」「薄いと思われたら終わり」と身構えていた。でも実際は、完璧な理屈より、等身大の見方のほうが届くこともある。
勝ち方を語れなくてもいい。
どう見ているかなら語れる。
そう思えたことが、自分にとっては小さな自信になった。
投資は、数字の前に「視点」だった
投資を始めた頃の自分は、数字がすべてだと思っていた。上がるか下がるか、儲かるか損するか。それが全ての世界だと。けれど続けていくうちに、少しずつ順番が変わってきた。
まず街を見る。人の流れを見る。店の空気を見る。サービスの変化を見る。そういう小さな違和感や発見が、後から「会社」につながっていく。
もちろん、数字は大事だ。だけど、数字だけで作られた投資は、自分の中で長続きしなかった。逆に、街から始まる投資は、続けられた。理由は自分の目にあるからだ。
一歩進むと、次の問いが生まれる
「投資してます」と言えるようになったら、次は「どうやって?」と聞かれる。これは当たり前の流れだ。でも、その問いに答えようとして、自分は初めて気づく。
自分は、何を信じているんだろう。
自分は、何を面白がっているんだろう。
第27話は、投資の技術の話じゃない。自分の投資の軸を、やっと言葉にしはじめた話だと思う。
完璧じゃなくていい。正解じゃなくていい。それでも、自分の見ている世界を、自分の言葉で語れたなら
それはちゃんと前進だ。
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