「もう、このままだと私、壊れる…」
あの夜、布団の中でそうつぶやいた。
上司の怒鳴り声、終わりの見えない業務量、眠れない夜。
すべてが自分を押し潰してくるようで、息をするのさえ苦しかった。

決意の夜
深夜、スマホのフォルダに残っていた一枚の写真。
そこには、笑顔で働いていた頃の私が写っていた。
「……こんな笑顔、もう二度とできない気がする」
胸がぎゅっと締め付けられて、気づけば視界がにじんでいた。
引き出しの奥にしまい込んでいた退職届の用紙を取り出し、
震える手で一文字ずつ書き込んでいく。
「逃げじゃない。生きるために、必要な選択なんだ。」
退職届を出した日
翌日、上司に退職届を差し出すと、鼻で笑われた。
「は? 今さら逃げるの?」
「ここまで育ててやったのに、恩を仇で返すのか?」
「どこに行っても通用しないよ、あんたなんか」
まるで見世物のように、周囲の視線が集まる。
でも私は泣かなかった。
あの日の私は、もう泣くことすらできないほど、心がボロボロだったから。
退職の日
手続きは淡々と進み、
人事担当者の「お疲れさまでした」の一言で、私は会社をあとにした。
だけど、不思議なくらい何も感じなかった。
達成感も、寂しさも、悔しさもなかった。
ただ、心の中が空っぽだった。

コンビニの光
帰り道、なぜかまっすぐ家に帰る気になれなくて、
ふらりと近所のコンビニに立ち寄った。
店内に流れる音楽。温かいホットコーヒーの湯気と香り。
ほんの少しだけ、現実に戻ってきた気がした。
「これで…良かったんだよね。」
そう小さくつぶやいたけれど、答えは返ってこなかった。
終わりじゃなく、はじまりへ
今だから言える。
退職は「逃げ」じゃない。
本当に逃げたいのは、壊れそうな自分自身だった。
もし今、同じように苦しんでいる人がいたら、
「何も感じなかった自分」に、どうか共感してほしい。
心が動かなくなる前に──
ほんの少しだけ、自分を守ってあげてください。
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