「よし、今日は完璧だ」
そう思える寿司が、ついにできた。
ネタの切り方も、シャリの握り加減も、口の中でホロっとほどける食感も…
ここまでくるのに、何度泥団子を握ったことか(笑)
友人や家族も、
「これ、ほんとにお店の寿司みたい!」
と嬉しい言葉をかけてくれるようになっていた。
でも、何かが足りない…?
ある日、渾身の一貫を皿に乗せて眺めていた。
握りは完璧。でも――何かが違う。
妙な違和感があった。
それは「器」だった。
シンプルな白い丸皿。
料理用としては何の問題もないけれど、私の握った一貫が、まるで惣菜みたいに見えてしまった。
「もっと、この寿司に合う器があるはずだ…」
その瞬間、頭の中で次の扉が開いた。
そうだ、自分で器を作ろう。

「器作り」が始まった
スマホ片手に「寿司 器」「陶芸 初心者」などで検索開始。
陶芸教室、自宅キット、YouTube講座…情報が山ほど出てくる。
中でも目を引いたのは、近所の陶芸教室のサイト。
体験コースもあるし、初回はエプロンだけでOKとのこと。
さっそく申し込んだ。
ろくろを前に、初めて触れた土の感触はひんやりしていて、懐かしかった。
子どもの頃に粘土遊びをした記憶がよみがえる。
でもこれは、遊びじゃない。
「この土が、私の寿司を支える舞台になるんだ」
ろくろを回しながら、
まだ何も形になっていない器の中に、
すでに自分の握った寿司を盛り付けるイメージが浮かんでいた。

好きの連鎖は止まらない
弟のケンタに「今度は器作り始めた」と言ったら、
「また始まったな〜」
と呆れられたけど、口元は笑っていた。
たぶん、彼も少しワクワクしてるのかもしれない。
こうして、私の「寿司道」は新たなフェーズへ。
ただ握るだけじゃない、魅せる寿司へと進化していく。
気づけば私の週末は、
午前:釣り→昼:捌く→午後:握る→夜:陶芸教室
という謎の修行スケジュールに。
でも、まったく苦じゃなかった。
だって全部、好きでやってることだから。
結びにかえて
最初はただの好奇心だった。
それが気づけばこだわりになり、
そして今は、自分だけの「表現」になっている気がする。
料理、器、空間――
全部がつながって、自分らしい寿司の世界ができていく感覚。
「趣味って、こんなに人生を豊かにするんだな」
そう思いながら、今日も私は器に合う寿司を握る。
そしてまた、次の扉がきっと開く。
この連鎖が終わることは、たぶんない。
それでいいのだ。
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