【私の趣味のストーリー 最終話深掘り】

私の趣味のストーリー 裏話

灯りを消さなかった夜の、その先

誰も来ない夜に、灯りを消さなかった。

それは「前向きな決意」っていうより、もっと地味で、もっと頑固なものだった。
“今日ここに立った自分を、置き去りにしない”っていう、ただそれだけ。

でもね。
灯りを消さなかったからって、翌日から急に世界が変わるわけじゃない。
むしろ、そこで踏ん張った分だけ、次の壁がはっきり見えてくる。

「続ける」って決めた瞬間に、不安が消えると思ってた。
違った。
続けるって決めた日から、不安が逃げられない形で隣に座る。

初めて「辞めたい」と口にした日

その日は、たぶん何かが特別だったわけじゃない。
特別じゃないから、余計に刺さった。

仕込みをして、整えて、暖簾を出して。


いつも通りの動き。
いつも通りの静けさ。
そして、いつも通り…誰も来ない。

カウンターの前に座って、湯呑みの湯気を眺めながら、ふと口から漏れた。

「……もう、辞めたいな」

誰に向けた言葉でもなかった。
怒りでもなかった。
泣き声でもなかった。
ただ、事実みたいに、落ちた。

その瞬間、びっくりしたのは自分だった。
「辞めたい」って、思うことはあっても、言葉にしたことはなかった。
言葉にすると、現実になる気がしたから。

でも現実は、もう十分に現実だった。
売上は立たない。
材料は減る。
時間だけは進む。
趣味って言い聞かせても、胸の奥ではずっと、生活みたいに重かった。

辞めたいの正体は「才能」じゃなく「孤独」だった

勘違いしてたことがある。

辞めたいって気持ちは、弱さとか、根性不足とか、才能がない証拠だと思ってた。
でも違った。

辞めたいの正体は、だいたい「孤独」だ。

やることをやっても、誰にも届かない。
頑張ってるのに、反応がない。
その時間が続くと、人は自分に疑いをかけ始める。

「自分が間違ってるのかな」
「向いてないのかな」
「そもそも、何で始めたんだっけ」

そうやって、毎日少しずつ、心の温度が下がっていく。
そしてある日、口から自然に出る。
「辞めたい」って。

だからこの言葉は、敗北宣言じゃなかった。
むしろ、心が出したSOSだった。
ここまで一人で抱えたよっていう、遅れてきた報告。

続ける理由は「勝つため」じゃなく「戻らないため」

辞めたいって言ったあと、店の中を見回した。

磨いた包丁も、整えたカウンターも、誰も座らない椅子も。
全部が「意味あるの?」って顔をして見えた。

でも、そこでひとつだけ確かなものがあった。

ここを辞めたら、たぶん自分は何も始めなかった日常に戻る。

それが怖かった。

客が来ないことよりも、売上が立たないことよりも、
「やってみた自分」をなかったことにするのが怖かった。

成功したいわけじゃない。
有名になりたいわけでもない。
ただ、「やってみたかった」だけ。

その小さな気持ちで始めたのに、
いつの間にか、結果が出ない自分を責めて、
始めたことまで否定しそうになってた。

続ける理由は、勝つためじゃなくて、戻らないためだった。
一歩踏み出した自分を、ちゃんと連れていくため。

灯りをつけるのは、誰かのためじゃなく、自分のため

「辞めたい」って口にして、少しだけ楽になった。
言ってしまったから、もう隠せない。
でも隠さなくていいって、初めて思えた。

辞めたいと思う日がある。
怖い日もある。
売れない日もある。
それでも、灯りをつける日がある。

その差は、才能じゃない。
気分でもない。
運でもない。

たぶん、姿勢だ。

「今日は無理だ」って日でも、
「それでも、ここに立つ」っていう姿勢。

別に格好良い話じゃない。
むしろ泥くさい。
でも、こういう泥くささがないと、物語は続かない。

最後に

ここまで読んでくれて、本当にありがとう。

趣味の話を書いてたはずなのに、
気づけば「続けるって何だろう」って話になってた。
たぶん書いてる俺が、一番救われてた。

誰も来なかった夜。
辞めたいって口にした日。
それでも灯りをつけた日。

その全部を、読んでくれる人がいたから、ちゃんと物語にできた。

また別の場所で、別の灯りをつける話を書きます。
そのときも、ふらっと覗きに来てくれたら嬉しい。

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