街で見かけた気になる企業 52話深掘り 地図は「道案内」から「街を歩かせるメディア」へ。Strolyが変える観光DX

街で見かけた企業シリーズ 深掘り

最近、調布から吉祥寺まで歩いた。

深大寺に寄って、神代植物公園を抜けて、井の頭公園まで。

ただ目的地に向かうだけの散歩のはずだったのに、歩いているうちに「地図って、ただ道を示すだけじゃないのかもしれない」と思うようになった。

そんな時に見つけたのが、株式会社Stroly(ストローリー)という会社だ。

Strolyは、GPSと連動したデジタルイラストマップを展開している京都発の企業。

普通の地図サービスと聞くと、Googleマップのように「最短ルートで目的地へ連れていくもの」を想像する。

でもStrolyが作っているのは、少し違う。

目的地へ早く着くための地図ではなく、思わず寄り道したくなる地図。

つまり、街を移動する場所から歩きたくなる体験に変えるサービスだ。

Strolyとはどんな会社なのか

株式会社Strolyは、2005年設立の京都発スタートアップだ。

社名の由来は、StoryとStrollを掛け合わせたもの。

まさに「物語」と「散歩」を組み合わせたような名前で、街歩き系の記事を書いている身としては、この時点でかなり気になる。

Strolyの特徴は、イラストで描かれた地図にGPSを組み合わせているところにある。

地図上には観光地、お店、イベント会場、回遊スポットなどが描かれ、スマホ上で自分の現在地を確認しながら歩ける。

ただ正確な地図を表示するだけなら、既存の地図アプリで十分だ。

でもStrolyの面白さは、「どこへ行くか」だけでなく、「どう歩きたくなるか」まで設計しているところにある。

売上は非公開。でも数字から見える現在地

未上場企業なので、Strolyの売上高は一般には公開されていない。

ただし、決算公告では2024年12月期の純利益が約マイナス6,955万円、利益剰余金が約マイナス5億8,922万円、総資産が約2億1,342万円と公表されている。

つまり現時点では、黒字を積み上げている成熟企業というより、観光DXや地域回遊という市場を取りにいく成長途中のスタートアップと見る方が自然だ。

また、スタートアップ情報サイトINITIALでは、Strolyの調達後評価額は約10.73億円とされている。

この数字を見ると、投資家や事業会社が「デジタルマップ×観光×地域活性化」という市場に可能性を見ていることが分かる。

赤字だからダメ、という話ではない。

むしろスタートアップの場合、今は利益よりも導入事例や利用データを積み上げる段階という見方もできる。

JTBとの提携が示す、観光領域との相性

Strolyは2018年に総額約2.5億円の資金調達を実施し、JTBとの包括的業務提携にも合意している。

この提携はかなり大きい。

なぜならStrolyのサービスは、単体の地図アプリというより、観光地・自治体・商店街・イベント運営と組み合わせて価値が出るタイプだからだ。

観光客に「ここへ行ってください」と強く誘導するのではなく、「なんかこっちも面白そう」と思わせて自然に歩いてもらう。

これは、観光地にとってかなり重要な考え方だと思う。

嵯峨嵐山の事例がかなり面白い

Strolyの導入事例の中でも、特に面白いのが京都・嵯峨嵐山での取り組みだ。

嵐山といえば、渡月橋や竹林の小径などに観光客が集中しやすいエリア。

人気があるのは良いことだけど、人が集中しすぎると混雑、ゴミ、住宅街への迷い込みなど、地域住民との摩擦も生まれる。

そこでStrolyは、イラストデジタルマップを使って、観光客を自然に北部エリアへ誘導する実証を行った。

結果として、住宅街への侵入率は一般観光客と比べて約85%減少。

さらに北部エリアへの誘導率は約1.7倍になった。

これはかなり面白い数字だ。

看板で「入らないでください」と書くのではなく、地図上で自然に別の魅力を見せる。

禁止ではなく、行きたくなる設計で人の流れを変える。

地図が、ただの案内ツールではなく、人の行動を変えるメディアになっている。

2.5万人以上が使ったマップに見える可能性

嵯峨嵐山の「周遊ガイド」は、2025年秋の紅葉シーズンに2.5万人以上がアクセスしたとされている。

 

さらに注目したいのが、利用者の37.4%が海外ユーザーだったことだ。

英語、中国語、韓国語など、さまざまな言語のユーザーが使っていた。

ここに、イラストマップの強さがある。

文字だけの案内は、言語の壁がある。

でもイラストなら、直感的に伝わる。

「ここ、面白そう」

「こっちに行ってみたい」

この感覚は、言葉が完璧に分からなくても伝わる。

インバウンド観光が戻ってきた今、こうした言葉に頼りすぎない観光案内は、かなり重要になっていくはずだ。

Googleマップとは戦う場所が違う

ここで思うのは、StrolyはGoogleマップと正面から戦うサービスではないということだ。

Googleマップは、圧倒的に便利だ。

目的地までの最短ルート、電車の乗り換え、営業時間、口コミ。

日常生活には欠かせない。

でも、便利すぎる地図は、ときどき街を通過点にしてしまう。

目的地だけを見て、途中の景色を飛ばしてしまう。

Strolyの地図は、その逆を狙っているように見える。

早く着くためではなく、寄り道したくなるための地図。

効率ではなく、回遊。

最短距離ではなく、体験。

このポジションは、かなり独自性がある。

自治体や観光地にとってのメリット

Strolyのサービスは、観光地や自治体にとってもメリットが大きい。

まず、観光客の回遊を促せる。

有名スポットだけに人が集中するのではなく、周辺のお店や隠れた名所にも人を流せる。

次に、オーバーツーリズム対策になる。

人の流れを分散できれば、混雑や住民トラブルの軽減につながる。

さらに、利用データを分析できる。

どのスポットが見られたのか。

どのルートで歩かれたのか。

どのエリアに人が流れたのか。

こうしたデータは、観光政策やイベント設計にも活用できる。

紙の観光マップでは見えなかった「人の動き」が、デジタル化によって見えるようになる。

ここが、Strolyのビジネスとしての面白さだ。

リスクは「導入先の広がり」と「収益化」

一方で、課題もある。

まず、売上高が公開されていないため、事業規模の実態は外からは見えにくい。

決算公告上では赤字が続いているため、今後どれだけ導入先を増やし、継続的な収益につなげられるかが重要になる。

観光DXは注目されている分野だけど、自治体案件やイベント案件は単発になりやすい可能性もある。

地図を作って終わりではなく、更新、分析、改善、再利用まで含めた継続モデルにできるか。

ここがビジネスとしての勝負どころだと思う。

また、観光地向けだけでなく、商業施設、万博、フェス、商店街、大学キャンパス、大型イベントなど、横展開できるかも大事になる。

「イラストマップを作る会社」で終わるのか。

それとも「人の回遊を設計する会社」になれるのか。

ここで評価は大きく変わりそうだ。

街で見かけたシリーズ的に見ると

街で見かけたシリーズとして見ると、Strolyはかなり面白い。

なぜなら、街歩きそのものをビジネスにしているからだ。

僕は最近、fuji散歩としていろいろな街を歩いている。

調布から吉祥寺まで歩いた時も、深大寺の参道、神代植物公園、井の頭公園、途中の何気ない道に、それぞれ違う面白さがあった。

でも、普通の地図だけを見ていたら、きっと最短ルートで通り過ぎていたと思う。

Strolyのような地図があると、「寄り道」が価値になる。

これは、今の観光や街づくりにかなり合っている。

モノを買うだけではなく、体験を楽しむ時代。

有名観光地だけではなく、ローカルな魅力を探す時代。

その流れの中で、Strolyのようなサービスは、まだまだ広がる余地があるように感じる。

まとめ:地図は、街の未来を変えるかもしれない

Strolyは、単なる地図サービスではない。

イラスト、GPS、観光情報、回遊データを組み合わせて、街の歩き方そのものを変えようとしている会社だ。

決算面ではまだ赤字で、売上規模も非公開。

投資対象として見るなら、現時点では成長途中のスタートアップであり、収益化の進み方は慎重に見る必要がある。

ただ、嵯峨嵐山のように、住宅街への侵入率を約85%減らし、北部エリアへの誘導率を約1.7倍にした事例を見ると、サービスの価値はかなり分かりやすい。

地図は、道を教えるだけではない。

人の流れを変え、街の魅力を掘り起こし、観光地の課題まで解決できる可能性がある。

そう考えると、Strolyは「地図の会社」というより、「街の歩き方をデザインする会社」なのかもしれない。

次にどこかの街を歩く時、僕は少しだけ地図の見方が変わりそうだ。

最短ルートではなく、寄り道したくなる道を探してみる。

そこに、まだ知らない街の面白さが隠れている気がする。

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