最近、調布から吉祥寺まで歩いた。
深大寺に寄って、神代植物公園を抜けて、井の頭公園まで。
ただ目的地に向かうだけの散歩のはずだったのに、歩いているうちに「地図って、ただ道を示すだけじゃないのかもしれない」と思うようになった。
そんな時に見つけたのが、株式会社Stroly(ストローリー)という会社だ。
Strolyは、GPSと連動したデジタルイラストマップを展開している京都発の企業。
普通の地図サービスと聞くと、Googleマップのように「最短ルートで目的地へ連れていくもの」を想像する。
でもStrolyが作っているのは、少し違う。
目的地へ早く着くための地図ではなく、思わず寄り道したくなる地図。
つまり、街を移動する場所から歩きたくなる体験に変えるサービスだ。

Strolyとはどんな会社なのか
株式会社Strolyは、2005年設立の京都発スタートアップだ。
社名の由来は、StoryとStrollを掛け合わせたもの。
まさに「物語」と「散歩」を組み合わせたような名前で、街歩き系の記事を書いている身としては、この時点でかなり気になる。
Strolyの特徴は、イラストで描かれた地図にGPSを組み合わせているところにある。
地図上には観光地、お店、イベント会場、回遊スポットなどが描かれ、スマホ上で自分の現在地を確認しながら歩ける。
ただ正確な地図を表示するだけなら、既存の地図アプリで十分だ。
でもStrolyの面白さは、「どこへ行くか」だけでなく、「どう歩きたくなるか」まで設計しているところにある。
売上は非公開。でも数字から見える現在地
未上場企業なので、Strolyの売上高は一般には公開されていない。
ただし、決算公告では2024年12月期の純利益が約マイナス6,955万円、利益剰余金が約マイナス5億8,922万円、総資産が約2億1,342万円と公表されている。
つまり現時点では、黒字を積み上げている成熟企業というより、観光DXや地域回遊という市場を取りにいく成長途中のスタートアップと見る方が自然だ。
また、スタートアップ情報サイトINITIALでは、Strolyの調達後評価額は約10.73億円とされている。
この数字を見ると、投資家や事業会社が「デジタルマップ×観光×地域活性化」という市場に可能性を見ていることが分かる。
赤字だからダメ、という話ではない。
むしろスタートアップの場合、今は利益よりも導入事例や利用データを積み上げる段階という見方もできる。
JTBとの提携が示す、観光領域との相性
Strolyは2018年に総額約2.5億円の資金調達を実施し、JTBとの包括的業務提携にも合意している。
この提携はかなり大きい。
なぜならStrolyのサービスは、単体の地図アプリというより、観光地・自治体・商店街・イベント運営と組み合わせて価値が出るタイプだからだ。
観光客に「ここへ行ってください」と強く誘導するのではなく、「なんかこっちも面白そう」と思わせて自然に歩いてもらう。
これは、観光地にとってかなり重要な考え方だと思う。
嵯峨嵐山の事例がかなり面白い
Strolyの導入事例の中でも、特に面白いのが京都・嵯峨嵐山での取り組みだ。
嵐山といえば、渡月橋や竹林の小径などに観光客が集中しやすいエリア。
人気があるのは良いことだけど、人が集中しすぎると混雑、ゴミ、住宅街への迷い込みなど、地域住民との摩擦も生まれる。
そこでStrolyは、イラストデジタルマップを使って、観光客を自然に北部エリアへ誘導する実証を行った。
結果として、住宅街への侵入率は一般観光客と比べて約85%減少。
さらに北部エリアへの誘導率は約1.7倍になった。
これはかなり面白い数字だ。
看板で「入らないでください」と書くのではなく、地図上で自然に別の魅力を見せる。
禁止ではなく、行きたくなる設計で人の流れを変える。
地図が、ただの案内ツールではなく、人の行動を変えるメディアになっている。
2.5万人以上が使ったマップに見える可能性
嵯峨嵐山の「周遊ガイド」は、2025年秋の紅葉シーズンに2.5万人以上がアクセスしたとされている。

さらに注目したいのが、利用者の37.4%が海外ユーザーだったことだ。
英語、中国語、韓国語など、さまざまな言語のユーザーが使っていた。
ここに、イラストマップの強さがある。
文字だけの案内は、言語の壁がある。
でもイラストなら、直感的に伝わる。
「ここ、面白そう」
「こっちに行ってみたい」
この感覚は、言葉が完璧に分からなくても伝わる。
インバウンド観光が戻ってきた今、こうした言葉に頼りすぎない観光案内は、かなり重要になっていくはずだ。
Googleマップとは戦う場所が違う
ここで思うのは、StrolyはGoogleマップと正面から戦うサービスではないということだ。
Googleマップは、圧倒的に便利だ。
目的地までの最短ルート、電車の乗り換え、営業時間、口コミ。
日常生活には欠かせない。
でも、便利すぎる地図は、ときどき街を通過点にしてしまう。
目的地だけを見て、途中の景色を飛ばしてしまう。
Strolyの地図は、その逆を狙っているように見える。
早く着くためではなく、寄り道したくなるための地図。
効率ではなく、回遊。
最短距離ではなく、体験。
このポジションは、かなり独自性がある。
自治体や観光地にとってのメリット
Strolyのサービスは、観光地や自治体にとってもメリットが大きい。
まず、観光客の回遊を促せる。
有名スポットだけに人が集中するのではなく、周辺のお店や隠れた名所にも人を流せる。
次に、オーバーツーリズム対策になる。
人の流れを分散できれば、混雑や住民トラブルの軽減につながる。
さらに、利用データを分析できる。
どのスポットが見られたのか。
どのルートで歩かれたのか。
どのエリアに人が流れたのか。
こうしたデータは、観光政策やイベント設計にも活用できる。
紙の観光マップでは見えなかった「人の動き」が、デジタル化によって見えるようになる。
ここが、Strolyのビジネスとしての面白さだ。
リスクは「導入先の広がり」と「収益化」
一方で、課題もある。
まず、売上高が公開されていないため、事業規模の実態は外からは見えにくい。
決算公告上では赤字が続いているため、今後どれだけ導入先を増やし、継続的な収益につなげられるかが重要になる。
観光DXは注目されている分野だけど、自治体案件やイベント案件は単発になりやすい可能性もある。
地図を作って終わりではなく、更新、分析、改善、再利用まで含めた継続モデルにできるか。
ここがビジネスとしての勝負どころだと思う。
また、観光地向けだけでなく、商業施設、万博、フェス、商店街、大学キャンパス、大型イベントなど、横展開できるかも大事になる。
「イラストマップを作る会社」で終わるのか。
それとも「人の回遊を設計する会社」になれるのか。
ここで評価は大きく変わりそうだ。
街で見かけたシリーズ的に見ると
街で見かけたシリーズとして見ると、Strolyはかなり面白い。
なぜなら、街歩きそのものをビジネスにしているからだ。
僕は最近、fuji散歩としていろいろな街を歩いている。
調布から吉祥寺まで歩いた時も、深大寺の参道、神代植物公園、井の頭公園、途中の何気ない道に、それぞれ違う面白さがあった。
でも、普通の地図だけを見ていたら、きっと最短ルートで通り過ぎていたと思う。
Strolyのような地図があると、「寄り道」が価値になる。
これは、今の観光や街づくりにかなり合っている。
モノを買うだけではなく、体験を楽しむ時代。
有名観光地だけではなく、ローカルな魅力を探す時代。
その流れの中で、Strolyのようなサービスは、まだまだ広がる余地があるように感じる。
まとめ:地図は、街の未来を変えるかもしれない
Strolyは、単なる地図サービスではない。
イラスト、GPS、観光情報、回遊データを組み合わせて、街の歩き方そのものを変えようとしている会社だ。
決算面ではまだ赤字で、売上規模も非公開。
投資対象として見るなら、現時点では成長途中のスタートアップであり、収益化の進み方は慎重に見る必要がある。
ただ、嵯峨嵐山のように、住宅街への侵入率を約85%減らし、北部エリアへの誘導率を約1.7倍にした事例を見ると、サービスの価値はかなり分かりやすい。
地図は、道を教えるだけではない。
人の流れを変え、街の魅力を掘り起こし、観光地の課題まで解決できる可能性がある。
そう考えると、Strolyは「地図の会社」というより、「街の歩き方をデザインする会社」なのかもしれない。
次にどこかの街を歩く時、僕は少しだけ地図の見方が変わりそうだ。
最短ルートではなく、寄り道したくなる道を探してみる。
そこに、まだ知らない街の面白さが隠れている気がする。
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