「頼るって、甘えなの?」が頭から離れなかった
「困ってるなら言ってね。ここでは頼るのも普通だから」
あの言葉を聞いたとき、ありがたいのに、胸の奥が妙にざわついた。
頼っていいよ、と言われているのに。
頼ったほうが早いと分かっているのに。
私はどこかで「それはできない」と思ってしまった。
たぶん私は、頼ることそのものより、頼ったときに起きる何かが怖かった。
迷惑だと思われるかもしれない。
面倒くさいと思われるかもしれない。
「できない人」ってラベルを貼られるかもしれない。
そんな想像が勝手に先回りして、口を止める。
そして結局、いつもの言葉に逃げる。
「大丈夫」
「平気」
「なんとかなる」
「ちゃんとしてる人」ほど、頼るのが下手になる
私は昔から、ちゃんとしてる側に立とうとしてきた気がする。
誰かに迷惑をかけない。
空気を乱さない。
弱音を吐かない。
自分のことは自分で片づける。
それは一見、立派に見えるかもしれない。
でも裏側では、ずっと「崩れたくない」が動いている。
頼った瞬間に、自分の評価が落ちる気がする。
助けが必要だと認めた瞬間に、「私は弱い」と確定してしまう気がする。
たぶん私は、助けを求めることを敗北みたいに感じていた。
勝ち負けじゃないのに。
海外に来て、頼るハードルがさらに上がった
海外では、言葉の壁がある。
文化の違いもある。
常識も、距離感も、表情の意味も、全部ズレる。
だから私は余計に慎重になった。
「変な英語で話して、笑われたらどうしよう」
「言い方が失礼だったらどうしよう」
「いちいち聞いて、嫌がられたらどうしよう」
分からないことがあっても、聞かずにやり過ごす。
困っていても、笑って誤魔化す。
とりあえず自分でなんとかする。

そうやって平気な人を演じる回数だけが増えていった。
「分かったふり」をしてると、心だけが置いていかれる
語学学校でのグループワークの日。
説明は全部英語。
大枠は分かるけど、細かいニュアンスが掴めない。
でも私は頷く。
分かった顔をする。
置いていかれないように、それっぽく合わせる。
この「分かったふり」って、実はめちゃくちゃ疲れる。
脳は情報を追いかけてるのに、口は何も言わない。
心は「助けて」と言ってるのに、顔は笑ってる。
一番きついのは、誰にもバレないまま消耗することだった。
助けを求める前に、助けが来た
そのとき、隣にいたクラスメイトがふと聞いてきた。
「さっきの説明、分かった?ちょっとややこしいよね」
その一言で、張りつめてたものが少しだけ緩んだ。
私は一瞬迷って、でも小さく言った。
「…正直、半分くらい」
それだけで、空気が変わった。
相手は笑って、「だよね、私も。じゃあ一緒に確認しよ」って言った。

あれ?って思った。
頼ったのに、軽く流された。
否定されなかった。
むしろ、同じ目線に戻してくれた。
頼ることは「お願い」じゃなくて「共有」だった
私はずっと、頼る=お願い=迷惑、だと思ってた。
でもあの日のやりとりは違った。
困ってることを共有して、
分からない部分を確認して、
一緒に前へ進む。
それは「甘え」じゃなくて、普通の連携だった。
助けてって言うのは、弱さの告白じゃない。
状況を正確に伝える、ただのコミュニケーションなんだと思った。
「助けて」が言えない人は、意志が弱いんじゃなくて、怖いだけ
私が言えなかったのは、強がりじゃない。
ただ怖かっただけだ。
否定されるのが怖い。
分かってもらえないのが怖い。
弱い自分を見せるのが怖い。
その怖さは、過去に一度、頼った自分が少しだけ否定された記憶から来ている。
「それくらい、みんな我慢してるよ」
「気にしすぎじゃない?」
「自分でなんとかできるでしょ」
悪気がなかったのは今なら分かる。
でも当時の私は、その言葉で胸の奥がすっと冷えるのを感じた。
頼った自分が間違ってたみたいに思えた。
それ以来、私は学んだ。
「助けてって言っても、分かってもらえないことがある」
「だったら、最初から言わないほうが楽だ」
そうやって私は、ひとりで抱える人になっていった。
海外は「頼っていい場所」が見える場所だった
海外に来たからこそ、逆に気づいたことがある。
頼っていい場所も、ちゃんとある。
分かってくれる人も、ちゃんといる。
頭では分かっているのに、心が追いついていなかっただけ。
だから私は今、練習したい。
怖いままでもいい。
少しずつでいい。
また、誰かに頼る練習をしていきたい。
「助けて」って言うことは、弱さじゃない。
自分を大事にしようとしている、ただそれだけのことなんだと思う。
次回(第13話)につながる、今日の結論
頼ることに罪悪感があるのは、
私が怠けたいからじゃない。
逃げたいからじゃない。
「頼った結果、否定されるのが怖い」
その記憶が、身体に残っているだけだった。
次回は、その罪悪感の正体をもう少しだけ言葉にする。
「頼るって、甘えなの?」
その答えが、少しだけ見えた日の話。
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