ストレスで潰されかけた私 海外編 18話深掘り

ストレスに潰されかけた私 海外編ブログ版

完璧じゃない英語が、いちばん自分を止めていた

海外に来てから、英語そのものよりも先にぶつかったのは、「話しかける前の怖さ」だった。

単語が分からないとか、発音に自信がないとか、もちろんそういう不安もある。
でも実際にいちばん大きかったのは、「変に思われたらどうしよう」という気持ちだった気がする。

この言い方で合ってるかな。
文法がおかしかったらどうしよう。
聞き返されたら、次は何て言えばいいんだろう。

そんなことを考え始めると、口を開くまでに時間がかかる。
そして時間がかかるほど、今度は「もうこのタイミングじゃないな」と思ってしまう。

本当は話したい。
気になることもある。
聞いてみたいこともある。

でも、頭の中で文章を整えているうちに、会話の入口が閉じていく。

海外生活の中でしんどいのは、英語ができないことそのものじゃなくて、
「言いたいのに言えなかった自分」が何度も積み重なっていくことなのかもしれない。

黙って通り過ぎるたびに、小さな後悔だけが残っていた

海外に来てから、話しかけるチャンスは何度もあった。

スーパーのレジで、ちょっとした一言を返せそうな場面。
シェアハウスで、誰かが楽しそうに話している場面。
街で、道を聞きたいのに聞けない場面。

そのたびに、心の中では会話が始まっていた。

でも現実では、何も言えないまま終わることがあった。
口に出す前に考えすぎて、結局タイミングを逃す。
そして、その場を離れたあとに「ああ、やっぱり聞けばよかった」と思う。

この聞けなかった話せなかったは、意外とあとを引く。
失敗した記憶よりも、やらなかった記憶のほうが、静かに長く残る。

たぶんそれは、自分の中に「本当はやりたかった」という気持ちがあるからだと思う。
やりたくなかったなら、通り過ぎても気にならない。
でも気になるということは、そこに少しだけ前へ進みたい自分がいる。

だからこそ、何もできなかったときの後悔は、想像以上にじわじわ残るんだと思う。

たった一言が出るまでに、頭の中では何度も会話していた

シェアハウスのキッチンで、見たことのない料理をしている人がいた。
スパイスのような香りがして、手元もなんだか面白そうで、自然と目が向いた。

「それ、何?」

日本語だったら、一瞬で出る言葉だと思う。
たぶん何も考えずに言えた。
でも英語になると、そのたった一言が急に遠くなる。

What is that? でいいのかな。
What’s that? のほうが自然かな。
聞き方が雑に聞こえないかな。
急に話しかけたら変かな。

たった数秒のことなのに、頭の中ではそれくらい考えていた。
そして、その数秒があるだけで、人はあっさり会話のタイミングを逃す。

英語に苦手意識があると、「話す」より前に「正しく話す」が先に来てしまう。
それが、想像以上に自分を固くする。

でも実際は、会話ってテストじゃない。
満点の文章を作ってから始めるものでもない。
入口はもっと雑で、もっと単純でいいはずなのに、その単純さがいちばん難しかったりする。

今聞かなかったら一生聞かないと思った瞬間

そのとき、通り過ぎようと思えば通り過ぎられた。
実際、いつもの自分ならそのまま部屋に戻っていたかもしれない。

でも、その日はふと変なことを思った。

「今、聞かなかったら、もう一生聞かないかもしれない」

大げさに聞こえるかもしれない。
たかが料理の名前を聞くかどうかの話だし、別に人生が変わるような場面でもない。

でも、海外での生活って、そういう小さい一歩の連続なんだと思う。

たった一言を飲み込む。
たった一歩を引く。
その繰り返しで、自分の世界は少しずつ狭くなっていく。

逆に言えば、たった一言を出すだけで、自分の世界は少しだけ広がる。

あのとき足が止まったのは、料理が気になったからだけじゃなかった。
ここでまた何も言えなかったら、たぶん自分はこの先もずっと、気になっても話しかけられない人のままだと思ったんだと思う。

だから出てきた言葉は、とてもシンプルだった。

「…What is that?」

それは流暢でもなければ、かっこいい一言でもない。
でも、自分の中ではちゃんと勇気のある一言だった。

伝わった瞬間、英語より大事なものに気づいた

相手は一瞬こちらを見て、それからすぐ笑ってくれた。
その反応だけで、かなり救われた。

「Oh, this? It’s…」

そこから少し会話が続いた。
料理の名前を教えてくれて、どこの国のものかも話してくれた。
全部を聞き取れたわけじゃない。
こちらの返しも、完璧じゃなかったと思う。

でも、それでも会話は成立していた。

その感覚は、自分の中で意外なくらい大きかった。
文法が完璧じゃなくても、発音に自信がなくても、まず言ってみれば伝わることがある。
そして、人は思っているよりずっと優しく受け取ってくれることがある。

今まで自分が怖がっていたのは、通じないことだけじゃなかったんだと思う。
むしろ、通じなかったときに傷つくことを怖がっていたのかもしれない。

でも実際には、話しかけてみたことで傷つくことはなかった。
それどころか、ちょっとだけ嬉しい記憶が増えた。

そのとき初めて、「うまく話せたかどうか」より「伝えようとしたかどうか」のほうが大事なんだと感じた。

失敗しないことより、後悔しないことのほうが大事だった

日本にいた頃の自分は、できるだけ失敗しないように動くことが多かった。
間違えないこと。
ちゃんとして見えること。
おかしく思われないこと。

それは悪いことじゃないと思う。
慎重さは、自分を守ってくれる。
ちゃんと考えることも、大人として必要な場面がたくさんある。

でも、その慎重さが強すぎると、自分の口を閉じる理由にもなる。

話しかけなければ、変な英語を言うこともない。
黙っていれば、間違いも起きない。
でもその代わり、何も始まらない。

海外に来てから少しずつ分かってきたのは、失敗しないことを優先しすぎると、経験まで減っていくということだった。

逆に、少しくらい不格好でも、先に一歩出したほうが残るものがある。
会話が生まれる。
表情を知る。
空気が変わる。
自分の中に、できたかもしれないが増える。

大きな成功じゃなくてもいい。
たった一言言えた、だけで十分意味がある。
その積み重ねが、あとからじわじわ自分を変えていく。

海外生活は、英語力より出してみる力を鍛えてくる

海外にいると、どうしても「英語ができるかどうか」に意識が向きやすい。
でも実際に暮らしてみると、それ以上に必要なのはとりあえず出してみる力なんじゃないかと思う。

完璧な文章を作る力より、知っている単語でなんとか伝えようとする力。
正しい発音より、伝えたい気持ちを引っ込めない力。
恥ずかしさをゼロにすることより、恥ずかしくても一歩出る力。

この力は、日本にいると意外と使わなくても生きていける。
でも海外では、それがあるだけで世界の見え方が変わる。

店で注文する。
バスの運転手に聞く。
ルームメイトに一言話しかける。
隣に座った人と少し会話する。

そういう小さな場面のひとつひとつが、自分の殻を少しずつ割っていく。

もちろん、毎回うまくいくわけじゃない。
聞き取れなくて困ることもあるし、会話が続かないこともある。
でも、それでもいいんだと思う。

なぜなら、その場で完璧にできなくても、「次はもう少し話せるかもしれない」が残るからだ。

怖さがなくなったんじゃなく、怖くても言えたが増えてきた

たぶん誤解しやすいけれど、こういう経験をしたからといって、急に英語への不安がゼロになるわけじゃない。
今でも、話しかける前に少し構えることはあると思う。

でも、前と違うのは、怖いからやめるだけではなくなったことだ。

怖い。
でも言ってみる。
不安。
でも聞いてみる。

この「でも」の部分が、少しずつ増えてきた。
それが、自分の中ではすごく大きい。

人は劇的に変わるというより、こういう小さな成功で少しずつ緩んでいくんだと思う。
ある日突然別人になるんじゃなくて、昨日よりほんの少し口が軽くなる。
昨日よりほんの少し、自分を止めにくくなる。

海外に来てからほどけていった怖さは、英語への怖さでもあるけれど、もっと根っこの部分では「間違える自分を許せない怖さ」だったのかもしれない。

でも、間違えても会話は終わらない。
むしろそこから始まることもある。
そう思えるようになっただけで、呼吸が少し楽になった。

世界を広げるのは、難しい単語じゃなくて最初の一言だった

海外生活というと、大きな成長や派手な変化を思い浮かべることがある。
でも実際に自分を変えるのは、たぶんもっと地味な瞬間だ。

キッチンで立ち止まること。
気になった料理について聞いてみること。
たった一言を、飲み込まずに外へ出すこと。

その一言で、会話が生まれる。
相手のことを少し知る。
自分の中に、小さな自信が残る。

世界が広がるというのは、こういうことなのかもしれない。
遠くへ行くことでも、大きく変わることでもなく、昨日まで言えなかった一言が言えるようになること。

あの日の「What is that?」は、本当に短い言葉だった。
でも、自分の中では確かに扉を開ける言葉だった。

完璧じゃなくていい。
伝わり方が少し不格好でもいい。
それでも、口に出した言葉は、自分の世界を前に進めてくれる。

海外に来てから、またひとつ、自分の中の怖さがほどけた。
そしてたぶんこれからも、そういう小さな一歩の積み重ねで、少しずつ変わっていくんだと思う。

最初の一言は、いつだって勇気がいる。
でもその勇気は、思っているよりずっと、ちゃんと未来を変えてくれる。

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