【私の趣味のストーリー 22話深掘り】

趣味のストーリー 

小さな店が、少しずつ形になっていく日々


物件契約の日、手が震えた理由

物件の契約書にサインをした瞬間、胸の奥で何かが「コトッ」と動く音がした。
覚悟とか、不安とか、夢とか…いろんな感情が混ざり合って、手が少しだけ震えた。

ずっと探していた「自分のお店」
レトロで小さくて、手をかければかけるほど良くなる…そんな空間。

契約書にサインしただけなのに、
人生の次のページに、ガサッと音を立てて進んだような気がした。

親方から言われた言葉がまた頭をよぎる。

「焦るな。だが、止まるな。」

止まらずにここまで来た。
ついに、自分の物語が始まる場所を手に入れた。


初めて鍵を開けた瞬間にふるえた

契約した翌日。
私は小さな鍵を握りしめて、商店街の一角に佇んでいた。

カラン…と小さく音を立てて扉が開く。
古い木の匂いと、少し湿った空気。
けれどその空気が、なぜか温かかった。

「ここで、人が笑うんだよな」
そう思った瞬間、胸が熱くなった。

窓から差し込む夕日が、
まるで「ようこそ」と言ってくれているみたいだった。

過去にスルーした物件が、
今は宝物のように見える。

人間って、変わるんだな。
見る目も、感じ方も、ちゃんと育つ。


「どんな店にする?」0→1が動き出す

椅子もない静かな空間で、私は一人、立ち尽くしていた。

・カウンターはどんな木にしよう?
・照明は温かい色がいいな
・器が一番綺麗に見える角度は?
・お客さんの顔が見える距離感は?

考えた瞬間、ワクワクが全身に広がった。

大きな店じゃなくていい。
10席もなくていい。

ただ、今日来てくれた人が
「ここ、落ち着くなぁ」
と思える空間を作りたい。

私の器も寿司も、
「特別な一日」をそっと支えられる場所であってほしい。

そのための0→1が、今ゆっくり動き出している。


壊す・直す・磨く 全部が物語になる

数日後、工具を持って店に入った。

壁を外しながら、
「こんなところに板が入ってるのか…」と感心したり、
古い照明を外しながら、
「ここに新しい光が灯るんだな」と想像したり。

手を動かすほど、この空間と会話しているようだった。

汗をかく作業なのに、
まるで宝探しみたいで楽しかった。

お店が形になるまでの時間が、
すでに思い出になり始めている。

「大変だなぁ」じゃなくて、
「楽しいなぁ」と思える自分がいた。

修行時代じゃ考えられない気持ちだ。


この場所が、誰かの再出発の場所になる未来

夕方、作業を終えて電気を消すと、
窓に映る薄いオレンジ色の空が見えた。

ここで誰かが泣いたり、笑ったり、
大切な話をしたり、
新しい一歩を踏み出したりするんだろう。

私の寿司と器が
「背中をそっと押す存在」になれたらいい。

店作りとは、
未来を設計することなんだと気づいた。

この場所が、
誰かの再出発の物語のはじまりになる。

そんな願いを胸に、私は今日も鍵を閉めた。


📖 次回:店の「顔」をつくる日。カウンターに最初の木を置いた瞬間。

 

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